未来のスパコンを創造し、それを活用する技術を開拓する

当研究室は、東北大学サイバーサイエンスセンターで実運用されているスーパーコンピュータ(スパコン)とその課題を意識しながら、最先端科学技術のさらなる進展や革新的「ものづくり」に真に貢献できる次世代のスーパーコンピューティング技術の創出を目指しています。特に、スパコンの性能を最大限に活用するための基盤ソフトウェア技術や、スパコンの新しい利用方法の開拓を中心に研究を進めています。最近では、熟練のプログラマによる職人的なプログラミング作業を機械学習で置き換えて自動化する研究や、リアルタイム観測データと連動して臨機応変にスパコンを使うための研究をしています。さらには、ベクトルプロセッサや、量子コンピュータ、アプリケーションに合わせて再構成可能なハードウェア等を、スーパーコンピューティング分野で有効活用するための研究も行っています。


スパコンを中核とするサイバーフィジカルシステムの実現に向けて

センサー技術やIoTデバイスの発展により、大量のデータが時々刻々と生成されています。そのようなリアルタイム観測データと連動して臨機応変に運用できるスパコンの実現を目指し、普段は学術研究に使われているスパコンを、緊急時には防災減災とはじめとする別の目的でも迅速かつ確実に利用するための基盤ソフトウェア技術の開発と、それを応用した実システムの構築を行っています。

  • Mulya Agung, Yuta Watanabe, Henning Weber, Ryusuke Egawa, and Hiroyuki Takizawa, “Preemptive Parallel Job Scheduling for Heterogeneous Systems Supporting Urgent Computing,” IEEE Access, Volume 9, pp. 17557-17571, 2021.(DOI)
  • Minglu Zhao, Reo Furuhata, Mulya Agung, Hiroyuki Takizawa, and Tomoya Soma, “Failure Prediction in Datacenters Using Unsupervised Multimodal Anomaly Detection,” The IEEE BigData 2020, the third international conference on the Internet of Things Data Analytics (IoTDA), 2020.(DOI)

 

機械学習技術によるソフトウェア開発支援の可能性を探る

機械学習技術は近年急速に発展しています。ソフトウェア開発に求められるプログラミング、性能解析、デバッグ等の作業は高度に知的であり、そのすべてを機械学習モデルに任せるのは難しいかもしれませんが、従来では人間が行ってきた作業の一部を機械学習技術で代替できる可能性は十分あります。このため、ソフトウェア開発における機械学習技術の効果的利用法を研究しています。

  • Hang Cui, Shoichi Hirasawa, Hiroaki Kobayashi, and Hiroyuki Takizawa, “A Machine Learning-based Approach for Selecting SpMV Kernels and Matrix Storage Formats,” IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E101-D, No.9, Sep 2018 (DOI)
  • Zhen Wang, Agung Mulya, Ryusuke Egawa, Reiji Suda, and Hiroyuki Takizawa, “Automatic Hyperparameter Tuning of Machine Learning Models under Time Constraints,” IEEE BigData 2018 workshop, The Second International Workshop on Automation in Machine Learning and Big Data (AutoML 2018), December 13, 2018, Seattle, WA, USA.(DOI)
  • Reo Furuhata, Minglu Zhao, Mulya Agung, Ryusuke Egawa, and Hiroyuki Takizawa, “Improving the accuracy in SpMV implementation selection with machine learning,” The Eighth International Conference on Computing and Networking Workshops (CANDARW), 2020.(DOI)

 

多様なプロセッサの適材適所での利用を可能にするプログラミング環境の実現

どのような処理でもそつなくこなす汎用プロセッサよりも、特定の処理のために設計された専用プロセッサの方が効率よくその処理を実行できるため、近年のスパコンには長所短所の異なる複数種類のプロセッサが搭載されるようになっています。ベクトルプロセッサ、GPU、量子アニーラや再構成可能デバイスなどの多様なプロセッサを適材適所で利用するための研究を行っています。

  • Yinan Ke, Mulya Agung, and Hiroyuki Takizawa, “neoSYCL: a SYCL implementation for SX-Aurora TSUBASA,” International Conference on High Performance Computing in Asia-Pacific Region, pp.50-57, 2021. (DOI)
  • Yuta Sasaki, Michael Ryan Zielewski, Mulya Agung, Ryusuke Egawa and Hiroyuki Takizawa, “Quantum Compiler : Automatic Vectorization Assisted by Quantum Annealer,” The ISC High Performance conference 2020 (poster), 2020.(link)
  • Michael Ryan Zielewski, Mulya Agung, Ryusuke Egawa and Hiroyuki Takizawa, “Improving Quantum Annealing Performance on Embedded Problems,” Supercomputing Frontiers and Innovations, Volume 7, Number 4, pp. 32-48, 2020.(DOI)

 

スパコンを実際にとことん使いこなしてその限界に挑む

現代の日常生活は様々なコンピュータであふれかえっており、その性能は十分に高くなっていると感じている人も多いかもしれません。しかし、最新型のコンピュータでも性能が全然足りない分野はたくさんあります。特に科学技術の多様な分野において、大規模コンピュータシステム(いわゆるスーパーコンピュータ、スパコン)を使った数値シミュレーションは必要不可欠な存在になっており、世界中でし烈なスパコン開発競争が起こっています。現在でもスパコンは大規模で複雑な計算システムですが、高性能化を実現するために今後さらなる大規模化、複雑化が避けられません。そのように大規模で複雑なスパコンを使いこなすことは、それ自体が重要な研究課題です。

我々はこの課題に対して、システム設計からそれを使いこなすプログラミングや利用技術まで、高性能計算技術を幅広く研究開発しています。特にスパコンの性能を引き出すことができるようにプログラムを修正する作業(性能最適化)を支援するために、大規模な国際共同研究プロジェクトを先導し、先駆的な研究を行っています。同研究プロジェクトに関する詳細は以下のページをご覧ください。

(プロジェクトのページ) https://xev.sc.cc.tohoku.ac.jp

また、他分野の研究者と協力して、スパコンの性能を最大限に引き出すようなアプリケーションを実際に開発することで、アプリケーション高速化技術やそれを支援する基盤ソフトウェア技術を研究開発しています。また、現在のスパコンの限界を明らかにすることで、将来のスパコンのあるべき姿や具備すべき機能と性能を議論し、その実現のために求められる要素技術を研究しています。

  • Kazuhiko Komatsu, Ayumu Gomi, Ryusuke Egawa, Daisuke Takahashi, Reiji Suda, and Hiroyuki Takizawa, “Xevolver: A code transformation framework for separation of system-awareness from application codes,” Concurrency Computation, Vol. 32, No. 7, 2020.(DOI)
  • Ryusuke Egawa, Souya Fujimoto, Tsuyoshi Yamashita, Daisuke Sasaki, Yoko Isobe, Yoichi Shimomura, and Hiroyuki Takizawa, “Exploiting the Potentials of the Second Generation SX-Aurora TSUBASA,” The 11th International Workshop on Performance Modeling, Benchmarking and Simulation of High Performance Computer Systems (PMBS’20), Nov. 2020. (DOI)
  • Yuta Sasaki, Ayumu Ishizuka, Mulya Agung and Hiroyuki Takizawa, “Evaluating I/O Acceleration Mechanisms of SX-Aurora TSUBASA,” 2021 IEEE International Parallel & Distributed Processing Symposium Workshops, 2021.(DOI)

卒論/修論テーマ

2021年度

修士論文

  • データ駆動型アプローチによるコンパイラ最適化に関する研究
  • Spatiotemporal Anomaly Detection in Large-Scale Time-Series Data
  • 事前知識に基づくパラメータ探索の効率化とその応用に関する研究
  • 同時実行タスクの競合予測による複合型計算システムの計算効率向上に関する研究
  • A Device Selection Mechanism for Offload Programming
  • Memory-aware Task Mapping for Heterogeneous Multi-Core Systems
  • 機械学習によるコンパイルオプション選択に関する研究

学士論文

  • リアルタイム洪水シミュレーションのための動的資源割当てに関する研究
  • 機械学習に基づくジョブスケジューリングのためのデータ拡張に関する研究
  • 緊急ジョブ実行のためのジョブスケジューリングに関する研究

2020年度

修士論文

  • 大規模イジングモデルにおける量子アニーラの性能改善手法に関する研究
  • 多相データレイアウトによるメモリアクセス最適化に関する研究
  • 深いキャッシュ階層のための衝突を考慮した容量制御機構に関する研究
  • 単一ソースC++プログラミングのためのオフロードフレームワーク に関する研究

学士論文

  • FPGAによる高性能計算のためのプログラミング環境に関する研究
  • ベクトルプロセッサによる高速乱数生成に関する研究
  • 並列ベイズ最適化によるパラメータサーベイの効率化に関する研究
  • コード変換によるCアプリケーションの性能最適化に関する研究
  • ベクトルプロセッサによる機械学習処理の高速化に関する研究

2019年度

博士論文

  • NUMAシステムにおける局所性とメモリ負荷集中を考慮したタスクマッピングに関する研究
  • FPGAクラスタによる高性能ストリーム計算のための相互接続網に関する研究

修士論文

  • 異種プロセッサ混載システムのためのメタプログラミングに関する研究
  • FPGAを用いたベクトルプロセッサ間通信の効率化に関する研究
  • 並列化と時間制約によるハイパーパラメータ自動チューニングの高速化に関する研究
  • タスクに基づく並列実行のためのタスクマッピングに関する研究

学士論文

  • 仮想現実デバイスによる科学技術シミュレーション結果の可視化に関する研究
  • ベイズ推定に基づく並列計算自動チューニングに関する研究
  • 画像処理プロセッサのためのキャッシュメモリに関する研究
  • 量子アニーリングマシンによるコンパイラ支援に関する研究
  • 機械学習による計算カーネル実装選択に関する研究
  • 熱中症リスクシミュレーションのための分散計算システムに関する研究
  • 大規模データストリーム解析に基づく異常検知に関する研究

2018年度

博士論文

  • 不規則な並列アプリケーションのためのOpenMP拡張に関する研究

修士論文

  • 多体問題のためのストリーム型計算機の設計と評価に関する研究

学士論文

  • メモリアクセス解析に基づくプログラム高速化に関する研究

2017年度

修士論文

  • 機械学習を用いたプログラム高速化に関する研究
  • 高性能計算システムのための電力を考慮したジョブスケジューリングに関する研究
  • 高性能計算のための温度を考慮したチェックポイント間隔調整手法に関する研究
  • 機械学習モデルのハイパーパラメータ自動調整に関する研究

学士論文

  • 異種プロセッサの連携によるプログラム高速化に関する研究